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カトゆー家断絶

趣味について書きます

保育園開園断念のニュースを読み比べてみた

 ネットを見ていたら私立保育園が周辺住民の反対を受けて開園を断念した、というニュースが目に入りました。しかも反対の理由が「子供の声がうるさいから」といったものらしく、世知辛いなぁと思ってたらTwitterでこんな意見を目にしました。

 高齢者が「静かに暮らしたいから」という理由で反対してるイメージを想像していたのですが、単に子供の騒音だけが問題と片付けるのは早合点だったかも……と思いました。

 すでにこういったネットニュースも出ていますが、各マスメディアはこの問題について、どこに焦点を当てて報道していたのかが気になったので調べてみました。

読売

 見出しでは保育園側の説明が不十分だったことを表す住民の声が使われてます。記事の内容も建設予定の看板を立てたところから開園断念までの一連の経緯が綴られています。
 最後は記者会見した小西・こども施設計画課長と反対住民の両者のコメントを掲載。

一方、反対の署名をした近くの女性は「看板設置前に何の説明もなく唐突だった。自宅で親の介護もしており、静かな環境で暮らしたい」と話す。別の住民は「道路が狭く、送迎車両が増えると安全確保が難しくなる」と説明した。予定地に面する道路は狭いところで幅約3メートルで車のすれ違いはできない。

 ここでは子供の声が特段強調されている印象はなく、道路が狭いことで送迎に伴う安全面の問題が挙げられています。

朝日

 最初の段落で「周辺道路の幅が狭く、車の通行量の増加などを心配する声が多かった」ということを伝えています。またその後で子供の声についても触れています。

 子どもの声がうるさいことや、3~4メートルの幅の道路に車や人が増えることが反対の理由だという。予定地近くの女性は「道路が狭く危険。保育園向きの立地ではない。示された計画では駐車場が2台分しかなかった」と話した。

 気になるのは園側の対応についての報じ方です。

保育園を運営する予定だった社会福祉法人(同県松戸市)は昨夏から住民に園の建設を説明した。だがその後、住民約40人が法人や市に白紙撤回を求め要望書を提出。「保育園建設反対」の貼り紙も掲示した。

 読売の記事では住民に事前説明なく建設予定の看板を突然立て、その後住民側と面談を実施したと書かれていましたが、朝日の記事を読むと運営側は当初から丹念に説明したが理解を得られず……みたいにちょっと受ける印象が変わります。

毎日

 見出しに子供の声を持ってきています。

 千葉県市川市で4月に開園予定だった私立保育園が「子供の声でうるさくなる」などの近隣住民の反対を受け、開園を断念していたことが分かった。

 最初の段落でもこのようにクローズアップしていますが、その後の段では、

「子供の声が騒音になる」「保育園が面する道路は狭いので危険だ」などの意見が強く、建設に着手できなかった。

 ということを伝えています。


 また上記記事の反響を受けてか12日の夜に新たに記事が出されます。

 ここでも見出しと冒頭の段落で子供の騒音が強調されています。

 千葉県市川市で4月に開園予定だった私立保育園が「子どもの声でうるさくなる」などと近隣住民から反対されて建設を断念したことが波紋を広げている。

 では安全面について何も触れられてないかというとそうでもなく、

 建設予定地は幅約3メートルの道路に面していた。地元には保護者らの車や自転車の往来が激しくなり、危険が増すとの懸念がもともと強く、市の説明不足や対応の悪さを指摘する声も相次ぐ。

 と市の対応についてもあわせて報じています。
 その後は反対した住民と、消極的賛成と思われる住民と小西課長の3者のコメントが掲載。
 また最後に「子供の声巡り各地でトラブル」と子供の騒音を巡るトラブルを幾つか紹介しています。

日経

 共同通信の記事をそのまま配信してる分しか見当たりませんでしたが一応チェックします。
 冒頭の「近隣住民の反対で開園中止に追い込まれた」という表現が園側に寄ってる気がしますが気にしないことにします。
 建設予定の看板を突然立てたことは書かれていませんが、市と園が昨年10月以降に説明会を複数回開いたことが書かれており、

「騒がしくなる」「狭い道路に送迎の車が入ると危険」などの意見が出て、建設に着手できなかった。

 ということを伝えています。
 最後のコメントは「住民に受け入れてもらえなかったのは残念」という市の担当者のみ。

共同通信

 一応その後の共同の記事も見てみると、他に断念や延期に追い込まれるケースを調査していましたが、見出しは「子どもの声うるさい」を持ってきていました。
 もうちょっと他にもどういった理由があったかの中身が知りたいところです。

産経

 この問題に関して産経は熱心? なのか、「保育園開園中止」の記事を幾つか出しています。

 最初の記事では見出しに「子供の声」を持ってきています。

説明会を複数回開いたが「騒がしくなる」「狭い道路に送迎の車が入ると危険」などの意見が出て、建設に着手できなかった。

 という問題の経緯が報じられています。最後は市の担当者と近隣住民双方のコメントを掲載。

「道路が車1台やっと通れるくらいの狭さで、送迎のときに事故が起きるのが怖い。子供の声も気になる」と

 送迎と子供の声が問題点として挙げられています。


 その後の記事では市が折衷案を出したものの、住民から理解を得られなかったという経緯が掲載。

市は事業者とともに住民説明会などで「防音壁を設置し、窓を二重にする」「送り迎えの保護者が車で道路に侵入しないように、別の場所に駐車場を借りる」といった対策を示して折り合いを図ったが、「聞く耳持たない状況」となり、開園中止に至ったと説明している。

 しかし「聞く耳持たない状況」はちょっと穏やかじゃない表現な気がします。


 一方で送迎と子供の声の問題、また住民に事前の相談がなかったことから市の対応を指摘する声が拾われています。

住民側からは騒音や交通事故の危険性のほか、「そもそも住民に相談なく保育園設置が決まっており、市の対応に不満がある」といった声も噴出したという。


 また【保育園開園中止】のラベルが貼られた2つの記事では、どちらも子供の声は騒音なのか? といった点に絞って記事が書かれています。
 ただ反対の声を上げているのは様々な年代の人だと思うのですが、「高齢者らが反対」という見出しは対立を煽る方向に持って行ってないか気になります。

東京新聞

 見出しで子供の騒音問題が拾われており、「住民からは「子どもの声でうるさくなる」との批判もあった。」という部分が紹介されています。

法人は昨年八月下旬、現地に開園を知らせる看板を立てたところ、住民から「子どもの声が騒音になる」「狭い生活道路が車や送迎の自転車で混雑し危険」などの反発が出た。

 また発端となる部分からの経緯と送迎の問題も合わせて報じています。
 最後の中山教授のコメントと「厚生労働省の昨年の調査では、園児の声を騒音と思うことに共感する人の割合は35%。」というデータを紹介するあたり、東京新聞は子供の声が問題の焦点という立場なのかなという印象を受けます。


 ついでなのでテレビ局のニュースも見てみます。

日テレ

 「近隣住民から道路が狭く危険だといった意見や、子供の声で騒がしくなるという声など、反対が相次ぎ開園を断念していたことがわかりました」と問題の概要を説明。
 最初に都内の保育園で講じられている騒音対策を幾つか紹介するなど、騒音問題に重点を置いて報道していました。


 その後、今回の問題になった市川の件について経緯が流れます。
 8月に住民が建設反対を訴え(「子供たちの声でうるさくなる」というコメントつき)、10月の説明会では車や人の往来が危険という意見が出たことが紹介。


 また近隣住民のインタビューを流し、騒音は対策できるが幅が狭い道路での危険性は対策が難しいといった点が指摘されていました。

テレ朝

 保育園が開園予定だったものの、住民から反対を受けて中止という概要を摘んだ報道。
 この結果を受け、開園したら転園できていたかもしれないという子供を持つ近隣住民のインタビューのあと、なぜ計画が中止されたかの部分がクローズアップされます。


 ここでは子供の声が騒音にならないかという部分を不安視した反対住民のインタビューが流されています。右上のテロップも「うるさくなる」と強調。


 その後、道路の狭さを指摘する声や送迎に伴う安全面の問題点が取り上げられていました。


 報道ステーションではより踏み込み、導入で「子供たちの声がうるさいというのがその理由の一つのようなんですけども、取材を進めていきますと、どうもそれだけではないようなんです」とキャスターがコメント。


 「一番はここの道路事情」といった反対住民達の声を紹介していました。

TBS

 簡単な経緯ながら問題の概要が押さえられており、「子どもの声もうるさいのもあるが、それだけではない。この道路も狭いし、すれ違うこともできない」と、近隣住民のインタビューが紹介されていました。


 右上のテロップも「道が狭い」という点が強調されていて、騒音問題よりも送迎に伴う安全面に焦点を当てた報道になっているのかなと思います。

 TBSの他のニュース番組は見てないのですが、8月の訴えで騒音、説明会では道路の状況に論点があったという流れは日テレの報道と共通するので、恐らく運営側の経緯の説明がそうだったんじゃないかなと思います。

フジ

 ちょっと動画ニュースが見当たらなかったですが……「「子どもの声でうるさくなる」と、近隣住民からの反発を受け、開園を断念していたことがわかった。」と、報じています。

近隣住民から、「子どもの声でうるさくなる。保育園が面する道路は、狭くて危険だ」などと声が上がって、反対運動が始まった。

 と一応道路の危険性を指摘する声も拾われています。

NHK

 見出し自体は簡潔に概要を伝えるスタイルです。

子どもの声でうるさくなるなどとして反対が相次ぎ、去年9月には住民から社会福祉法人に計画を白紙に戻すよう求める要望書が提出されたということです。


 冒頭では子供の騒音を最初に持ってきていました。また運営側の理事長の、

社会福祉法人の理事長は「これまでに付近の住民を対象に説明会や意見交換会を合わせて3回開いたが、子どもの声がうるさいとか、保育園に面する道路が狭く出入りする車が危険だといった反対の意見が多く、開園を断念した。近隣の協力を得ないと運営はできず、残念です」と話しています。

 といったコメントを掲載。
 その後反対する気持ちもわかるという女性のインタビューでは道路事情が挙げられていました。

孫がいるという60代の女性は、「反対する気持ちも分かるような気がします。予定地だった辺りは道が狭くて曲がりくねって道路事情がよくありません。子どもを車で送り迎えするとなると、危ないと思います」と話していました。


 別にいいかもしれませんが最後にネットのニュースサイトも見てみます。

 市川市の会見に出席したと思われる弁護士ドットコムは、

反対意見で大きかったのは、「保育園が面する道路は抜け道になっているのに、車がすれ違えないくらい狭く危険」という安全面についての声だったという。また、事前に社会福祉法人や市側からの説明がなかったことも問題視されたそうだ。

小西課長は「市川市はもともと道が狭い。その中では道路が見通しもよく、(幼稚園も安全性に)配慮された設計だったので、設置に特に問題があるとは思っていませんでした。言葉が不十分で誤解を招いた部分もあったかもしれません」と述べた。

 と最も大きい反対意見として道路事情があったことを報じています。また騒音に関しても、

反対意見では「子どもの声でうるさくなる」という声も大きく、このことが報道されて、物議を醸している。これに対して、小西課長は「社会福祉法人は、防音壁を設置する予定でした。住民説明会で二重窓にするなどの提案もしていましたが、聞き入れてもらえませんでした」と説明。

 と市側の見解(+担当者の私見)を合わせて伝えていました。


 ハフィントンポストは毎日新聞が報じた内容から全国から抗議が殺到した経緯を掲載。
 その後も産経、弁護士ドットコムの記事を引用し、最後に「子供の声めぐるトラブル、各地で」と過去の事例を幾つか紹介しています。
 個人的にはもうちょっと独自取材して欲しいと思ってしまいますが、今回の騒動を地元住民の目線から見た記事があるのは参考になると思います。


 IRORIOもこの問題に触れ、毎日新聞の記事を取り上げつつ、他の地域でも起きる騒音のトラブルをピックアップしています。
 またネット上、というかTwitterの子供の声に関する賛否両論をいくつか取り上げ、「子供の声は騒音になるか否か」という部分を強調して伝えているように見えます。


 最後はサイゾー系のBusiness Journal。見出しからして煽りまくってます。

反対の理由は「子どもの声や泣き声で騒がしくなる」「保育所前の道が狭い上に車の往来が多く、危険だ」という意見が中心。

 と一応反対住民の意見が伝えられており、

反対意見の大きな一つである「道が狭くて危険」という意見にはまずまず納得はできる。保護者や保育園の職員としても、ただでさえ子どもの動向に気を配らねばならない状況下で、道路に注意を払うという状況になるのは確かに危険だ。当該の場所では過去に事故も起きているという。

 と道路事情が危険という点は理解を示しています。
 ところがその後の段落で、

 しかし、「子どもの声や泣き声で騒がしくなる」という意見ははっきりいって意味不明だ。保育園側は防音壁なども設置すると近隣への配慮を訴えたが、聞き入れられることはなかったのだとか。調べてみると、この地域は一軒家が多く、高齢者の世帯が多いという情報があった。「やっぱり老人か」と思った人も多いだろう。「静かに暮らしたいから子どもの声は邪魔」「静かに暮らす権利がある」などと主張しているという話も。

 はっきりいって、これこそが「老害」。市や地域周辺を自分のものだとでも勘違いしているのだろうか。無意味にビルを建設することで日照権が侵害されるなどとはわけが違う。待機児童という社会問題を少しでも解決するという明確な「目的」がある。「子どもが騒がしい」と語った人間の発言はあまりにも想像力に欠け、社会性がない。これが何十年も生きてきた大人の発言だろうか。自分たちにうるさい子ども時代はなかったのか。

 と老人叩きを展開。反対しているのは高齢者だけではないですし、こういう読者の感情を操作しようとするのはちょっと不誠実かと思います。

まとめ

 この保育園の断念報道に関しては騒音問題の賛否も勿論あると思うのですが、それと同じくらい道路が狭く送迎の面で危険性があること、また事前説明がなく唐突に建設計画が立てられ住民の理解が得られなかったことなど様々な論点があると思います。
 ところがその辺りを単純化して子供の声は騒音か否か、もっと極端に子供の声がうるさいと思う老人vs虐げられる若者、みたいに煽るメディアが出てくると問題点が見えにくくなってしまうと思ったので、今回ちゃんと調べてみることにしました。
 調べる前は自分自身、また子供の騒音の話かな? と思い込んでいたので、ちゃんと調べてみてよかったです。
 問題点が様々な今回の件、別に騒音問題ばかり取り上げるから悪いとか、道路事情を取り上げないメディアが悪いという話ではなく、メディアによって何を一番読者、視聴者に伝えたがっているかという点が違うだけかなと思います。
 まぁ変に煽るメディアには流されないようにしようと思いました。

 はい。


【参考記事】
「保育園の隣に住むのは発狂レベルの騒音だった」という話 |